イスラム教

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イスラム教がイエス・キリスト(アラビア語名:イーサー)を預言者の一人だと考える主な理由は、イスラームの一神教(タウヒード)の教義と、預言者の連鎖という考え方に基づいています。

イスラームにおけるイエスの位置づけは以下の通りです。

1. 唯一神(アッラー)のメッセージの伝達者であるため

  • イスラームでは、神(アッラー)は人類に正しい道を示すために、**預言者(ナビー)使徒(ラスール)**を時代や民族ごとに送り続けてきたと考えます。
  • イエス(イーサー)は、モーセ(ムーサー)に続き、最後の預言者ムハンマドの前に、「インジール(福音書)」という新しい啓示を持ってイスラエルの子ら(ユダヤの民)を導くために遣わされた、偉大な預言者の一人であると信じられています。
  • 預言者の主な役割は、唯一神アッラーを崇拝すること神の教えに従うことを人々に伝えることです。イエスもこの役割を担ったとされます。

2. 厳格な一神教(タウヒード)の教義に基づくため

  • イスラームは神の絶対的な唯一性を厳格に守ります。神は唯一であり、分け隔てられたり、人間と同じ性質を持つことはないと考えます。
  • このため、キリスト教の教義である**「三位一体」や、イエスが「神の子」であり「神性」を持つという考えは拒否**されます。
  • イスラームの見解では、イエスは奇跡的な処女懐胎で生まれた特別な人物ですが、あくまで**「神のしもべ」であり「人間」**の預言者であると位置づけられます。彼を神として崇拝することは、唯一神信仰に反するとされます。

3. クルアーン(コーラン)に登場する奇跡と誕生

  • イスラームの聖典『クルアーン』には、イエス(イーサー)と彼の母マルヤム(マリア)について敬意をもって詳細に記述されています。
  • クルアーンは、イエスが父親なしで処女マルヤムから奇跡的に生まれたことや、病人を癒やし、死者を生き返らせるなどの数々の奇跡を神の力によって行ったことを認めています。
  • これらの奇跡は、彼が神に選ばれた偉大な預言者であることのであると見なされます。

要するに、イスラム教徒にとって、イエスはムハンマドに先立つ神の真実のメッセージを伝えた特別な奇跡を伴った人間の預言者であり、信仰の対象としての神ではないのです。