請求書のPDF

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AI を使って請求書の PDF を作成する方法は、大きく分けて以下の2つのアプローチがあります。

  1. 既存のデータから請求書を自動生成するアプローチ (最も一般的かつ実用的)
  2. 自然言語指示から請求書の内容とデザインを生成するアプローチ (先進的・実験的)

それぞれの方法について詳しく説明します。


1. 既存のデータから請求書を自動生成するアプローチ (最も一般的かつ実用的)

このアプローチでは、請求に必要なデータ(顧客情報、商品名、単価、数量、日付など)が既に存在し、AI はそのデータをテンプレートにはめ込み、PDF として出力する「自動化エンジン」として機能します。

AI の活用ポイント:

  • データ抽出 (RPA/OCR と LLM の組み合わせ): 紙の請求書やスキャンされた請求書からデータを自動で読み取り、構造化されたデータに変換する際に AI-OCR や LLM が活用されます。
  • テンプレート選択・生成 (LLM の可能性): ユーザーの要望(例:「シンプルな請求書」「ロゴ入りのプロフェッショナルな請求書」)に応じて、適切な請求書テンプレートを選択または生成する。
  • ビジネスロジック適用 (従来のプログラミングとLLM): 消費税計算、合計金額の算出、割引適用、期日の自動計算など。これは従来のプログラミングで処理されますが、複雑なロジックをLLMに指示してコード生成させることも可能です。
  • 最終的なPDF生成: 構造化されたデータをPDF形式で出力する。

具体的な実装方法 (Python を使用した例):

この場合、AI(GitHub Copilot や Gemini など)は、以下の作業を行うための Python コードの生成を支援する役割を果たします。

必要なライブラリ:

  • pandas: 請求データを扱うため
  • reportlab または fpdf2 または Pillowpyfpdf など: Python で PDF を生成するため
  • jinja2: テンプレートエンジン (HTML テンプレートから PDF を生成する場合)
  • weasyprint または wkhtmltopdf (外部ツール): HTML/CSS から PDF を生成する場合

手順:

  1. 請求データの準備:

    • Excel, CSV, データベースなどから請求データを準備します。例:
      invoice_data = {
          "invoice_number": "INV-2023-001",
          "invoice_date": "2023-10-26",
          "due_date": "2023-11-25",
          "client_name": "株式会社 XYZ",
          "client_address": "東京都千代田区1-2-3",
          "company_name": "AI Solution Labs",
          "company_address": "東京都渋谷区4-5-6",
          "items": [
              {"description": "AI開発コンサルティング", "quantity": 1, "unit_price": 300000},
              {"description": "データ分析レポート", "quantity": 1, "unit_price": 150000}
          ],
          "tax_rate": 0.10 # 10%
      }
      
  2. テンプレートの作成:

    • 最も柔軟なのは、HTML/CSS で請求書のテンプレートを作成し、そこにデータを埋め込む方法です。
    • AI に「シンプルな請求書の HTML/CSS テンプレートを書いてください。会社名、顧客名、商品リスト、合計金額、税金、支払い期限が含まれるように」と指示すると、基本的なテンプレートが生成されます。
    • 例 (invoice_template.html):
      <!DOCTYPE html>
      <html>
      <head>
          <meta charset="UTF-8">
          <title>請求書 - {{ invoice_number }}</title>
          <style>
              body { font-family: 'Noto Sans JP', sans-serif; font-size: 12px; } /* 日本語対応 */
              .invoice-box { max-width: 800px; margin: auto; padding: 30px; border: 1px solid #eee; box-shadow: 0 0 10px rgba(0, 0, 0, .15); font-size: 14px; line-height: 24px; color: #555; }
              .invoice-box table { width: 100%; line-height: inherit; text-align: left; border-collapse: collapse; }
              .invoice-box table td { padding: 8px; vertical-align: top; }
              .invoice-box table tr td:nth-child(2) { text-align: right; }
              .invoice-box table tr.top table td { padding-bottom: 20px; }
              .invoice-box table tr.top table td.title { font-size: 45px; line-height: 45px; color: #333; }
              .invoice-box table tr.information table td { padding-bottom: 40px; }
              .invoice-box table tr.heading td { background: #eee; border-bottom: 1px solid #ddd; font-weight: bold; }
              .invoice-box table tr.details td { padding-bottom: 20px; }
              .invoice-box table tr.item td { border-bottom: 1px solid #eee; }
              .invoice-box table tr.item.last td { border-bottom: none; }
              .invoice-box table tr.total td:nth-child(2) { border-top: 2px solid #eee; font-weight: bold; }
          </style>
          <!-- 日本語フォントを埋め込む場合は別途設定が必要 -->
      </head>
      <body>
          <div class="invoice-box">
              <table>
                  <tr class="top">
                      <td colspan="2">
                          <table>
                              <tr>
                                  <td class="title">
                                      <!-- ロゴ画像などをここに入れる -->
                                      請求書
                                  </td>
                                  <td>
                                      請求書番号 #: {{ invoice_number }}<br>
                                      発行日: {{ invoice_date }}<br>
                                      支払期日: {{ due_date }}
                                  </td>
                              </tr>
                          </table>
                      </td>
                  </tr>
                  <tr class="information">
                      <td colspan="2">
                          <table>
                              <tr>
                                  <td>
                                      {{ company_name }}<br>
                                      {{ company_address }}
                                  </td>
                                  <td>
                                      {{ client_name }}<br>
                                      {{ client_address }}
                                  </td>
                              </tr>
                          </table>
                      </td>
                  </tr>
                  <tr class="heading">
                      <td>項目</td>
                      <td>金額</td>
                  </tr>
                  {% for item in items %}
                  <tr class="item">
                      <td>{{ item.description }} ({{ item.quantity }} x ¥{{ "{:,.0f}".format(item.unit_price) }})</td>
                      <td>¥{{ "{:,.0f}".format(item.quantity * item.unit_price) }}</td>
                  </tr>
                  {% endfor %}
                  <tr class="total">
                      <td></td>
                      <td>小計: ¥{{ "{:,.0f}".format(subtotal) }}</td>
                  </tr>
                  <tr class="total">
                      <td></td>
                      <td>消費税 ({{ (tax_rate * 100)|int }}%): ¥{{ "{:,.0f}".format(tax_amount) }}</td>
                  </tr>
                  <tr class="total">
                      <td></td>
                      <td>合計: ¥{{ "{:,.0f}".format(total_amount) }}</td>
                  </tr>
              </table>
          </div>
      </body>
      </html>
      
  3. Python コードで HTML をレンダリングし、PDF に変換:

    from jinja2 import Environment, FileSystemLoader
    from weasyprint import HTML # pip install weasyprint
    import os
    
    # 1. データの準備 (上記 invoice_data を使用)
    invoice_data = {
        # ... (中略) ...
    }
    
    # 2. 合計金額などの計算 (AIにコード生成を指示できる部分)
    subtotal = sum(item['quantity'] * item['unit_price'] for item in invoice_data['items'])
    tax_amount = subtotal * invoice_data['tax_rate']
    total_amount = subtotal + tax_amount
    
    # データをテンプレートに渡すための辞書を準備
    render_data = {
        **invoice_data,
        "subtotal": subtotal,
        "tax_amount": tax_amount,
        "total_amount": total_amount
    }
    
    # 3. Jinja2でHTMLテンプレートをレンダリング
    env = Environment(loader=FileSystemLoader('.')) # カレントディレクトリにテンプレートがある場合
    template = env.get_template('invoice_template.html')
    html_out = template.render(render_data)
    
    # 4. WeasyPrintを使ってHTMLをPDFに変換
    # 日本語フォントの問題: WeasyPrintはシステムのフォントを利用するため、
    # 日本語フォントがインストールされている環境で実行するか、
    # CSSでWebフォントを指定する必要があります。
    pdf_file_path = f"invoice_{invoice_data['invoice_number']}.pdf"
    HTML(string=html_out).write_pdf(pdf_file_path)
    
    print(f"請求書が '{pdf_file_path}' として作成されました。")
    
    • AI の役割: 上記の invoice_data の構造を基に「Jinja2を使ってこのデータとinvoice_template.htmlをレンダリングし、weasyprintでPDFに変換するPythonコードを書いてください」と指示すれば、コード全体を生成してくれます。計算ロジック(小計、税金、合計)も指示すれば組み込んでくれます。

2. 自然言語指示から請求書の内容とデザインを生成するアプローチ (先進的・実験的)

これは、より高度な生成AI(GPT-4のようなLLM)の能力を活用し、ユーザーがテキストで「〇〇株式会社宛に、AI開発コンサルティング1件(30万円)とデータ分析レポート1件(15万円)の請求書を発行して。シンプルなデザインで、会社ロゴも入れて」といった指示だけで、請求書の内容(金額計算も含む)とデザイン、そしてPDF生成までを完結させるというものです。

実現に必要な要素:

  • 強力なLLM: ユーザーの意図を理解し、請求書に必要な項目を抽出し、計算を行い、デザインの指示も解釈できるモデル。
  • テンプレート生成/選択モジュール: LLMが解釈したデザイン指示に基づいて、既存のテンプレートをカスタマイズするか、動的にHTML/CSSを生成するモジュール。
  • PDF生成エンジン: 生成されたHTML/CSSを高品質なPDFに変換するツール(上記と同様)。
  • 画像生成AI (オプション): ロゴやアイコンなど、請求書内の画像を必要に応じて生成する。

AI の活用ポイント:

  • 意図解釈と情報抽出 (LLM): ユーザーの漠然とした指示から、請求書番号、顧客名、商品詳細、金額などの構造化された情報を正確に抽出。
  • 内容生成と計算 (LLM): 抽出した情報に基づいて、小計、税金、合計金額などを計算。不足している情報(例: 今日の日付、デフォルトの支払期日)を補完。
  • デザイン生成 (LLM + プロンプトエンジニアリング): 「シンプルなデザイン」「モダンなデザイン」「ロゴを右上に」といった指示をHTML/CSSコードに変換する。
  • API連携: PDF生成ツール、画像生成ツールなどとのAPI連携をLLMがオーケストレーション。

現状:

  • 現在のLLMでも、詳細なプロンプトを与えれば、請求書の内容(テキスト形式)や、シンプルなHTML/CSSのテンプレートコードを生成することは可能です。
  • しかし、完璧なデザインのPDFを直接出力したり、ロゴ画像を適切に配置したりするまでを、一回の自然言語指示だけで全て自動化するには、まだ複雑なシステム連携と精度の向上が必要です。多くの場合、LLMが生成したコードやテキストを人間がレビュー・修正する必要があります。

まとめ:

現時点での最も現実的なアプローチは、既存のデータとテンプレートを基に、AI(コード生成AI)の助けを借りて Python スクリプトを開発し、PDF を自動生成する方法です。これにより、請求書作成の定型業務を大幅に効率化できます。

AIに指示を出すことで、手作業でこれらのスクリプトを書く手間を減らし、カスタマイズされた請求書作成システムを迅速に構築できるでしょう。