銀行口座情報
福祉事務所の職員が、生活保護受給者の銀行口座情報を取得するのに手間がかかる理由は、
一言で言えば **「勝手には調べられない仕組みになっているから」**です。
理由を制度面から整理します。
① 銀行口座は「最も強い個人情報」に当たる
銀行口座情報は日本では
個人情報の中でも特に保護が強い情報です。
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預金残高
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入出金履歴
-
他口座の有無
これらは
行政であっても自由に取得できません。
👉
生活保護法があっても
無制限の調査権はない。
② 本人の同意(扶養照会・資産調査同意)が原則必要
福祉事務所が口座調査を行うには、原則として
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本人の同意書
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資産・収入申告書
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金融機関調査への同意
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が必要です。
同意がない場合:
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正当な理由を文書化
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調査の必要性を内部で確認
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法的根拠を明確化
👉
1件ごとに手続きが必要。
③ 銀行側も簡単には応じない
金融機関は
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守秘義務
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個人情報保護法
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金融庁ガイドライン
に縛られています。
そのため:
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曖昧な照会 → 拒否
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書式不備 → 差し戻し
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根拠不足 → 再提出
👉
福祉事務所 → 銀行 → 確認 → 回答
という往復が発生。
④ 全国一括照会システムがない(重要)
日本には
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「この人の全口座を一発で検索する仕組み」
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マイナンバーで即全銀行照会
は 存在しません。
理由:
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憲法上のプライバシー配慮
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財産権の保護
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行政権力の暴走防止
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銀行ごとに個別照会が必要。
⑤ 職員側の実務負担が非常に大きい
福祉事務所の職員は:
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生活保護ケース100世帯以上を担当
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口座調査は書類作成・管理が煩雑
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調査記録を残さないと違法になる
👉
「怪しいから調べる」では済まない。
⑥ 不当調査をすると行政が負ける
もし職員が
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必要性の説明不足
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過剰調査
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同意なしの調査
を行うと:
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行政不服申立て
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国家賠償請求
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監査・是正指導
につながる可能性があります。
👉
慎重にならざるを得ない。
まとめ(核心)
生活保護者の口座調査に手間がかかる理由は:
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銀行口座は強い個人情報
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原則として本人同意が必要
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銀行側の守秘義務が厳格
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一括照会制度が存在しない
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職員の実務負担と法的リスクが大きい
👉
「調べられない」のではなく
「慎重にしか調べられない」仕組み。
生活保護で 通帳(銀行口座)の提出を求められたときの正しい対応を、
「拒否すべきでない点」「確認すべき点」「出し方のコツ」「トラブル回避」
の順で整理します。
① 原則:正当な理由があれば提出は必要
生活保護法では、
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収入・資産の把握
-
不正受給の防止
のため、必要最小限の範囲での調査が認められています。
👉
正当な理由がある照会は、基本的に拒否できません。
ただし「無制限・無説明」は不可。
② まず確認すべき3点(重要)
提出前に、必ず口頭または書面で確認してください。
① 何の目的か
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収入確認か
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資産確認か
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特定の入金の確認か
👉
「今回の確認目的を教えてください」
② どの期間か
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直近1か月?
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3か月?
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6か月?
👉
必要以上に長い期間は要確認。
③ どの口座か
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保護費受給口座のみか
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他に申告済み口座があるか
👉
全口座一律提出は原則NG。
③ 正しい提出方法(安全・実務的)
✅ コピー提出が原則
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原本を預けない
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写真・コピーでOK
✅ 黒塗りしてよい情報
次は 原則不要 なので、事前に確認した上で
黒塗り(マスキング)可。
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取引相手の口座番号
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個人名・店舗名(収入と無関係なもの)
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ICカード残高反映などの雑多な記載
※ 金額・日付・入金元の性質は残す
✅ 提出時の一言(おすすめ)
「必要な確認に協力しますが、
目的に関係ない部分は個人情報なので
一部マスキングしています」
👉
これでトラブルになりにくい。
④ やってはいけない対応(不利になります)
❌ 提出拒否を感情的にする
❌ 黒塗りだらけで何も見えない
❌ 嘘の説明・記載漏れ
❌ 原本を長期間預ける
👉
「不協力」と記録されると不利。
⑤ 過剰要求をされた場合の対応
以下は 要注意。
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全口座・全期間を一括で要求
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目的説明なし
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コピー不可・原本提出強要
対応例(穏やかに)
「生活保護法上、必要最小限と聞いています。
今回の調査目的と、必要な範囲を
文書でいただけますか?」
それでも改善しない場合:
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上司(係長・課長)への相談
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市役所の相談窓口
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法テラス・弁護士相談
⑥ 提出後に必ずやること
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何を提出したかメモ
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提出日・担当者名を記録
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コピーを手元に保管
👉
後日のトラブル防止。
まとめ(要点)
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正当理由があれば提出は必要
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目的・期間・口座を必ず確認
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コピー提出・必要部分のみ
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黒塗りは節度を守る
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過剰要求は冷静に確認
👉
「協力するが、無防備には出さない」
これが正しいスタンスです。
生活保護に関して **福祉事務所が「どこまで調べられるのか(合法ライン)」を、
法律・運用・実務の3層で整理します。
結論から言うと、「無制限には調べられないが、必要最小限なら調べられる」**です。
① 法的な根拠(調査できる理由)
根拠条文は主にこの2つです。
● 生活保護法 第28条(調査権)
- 収入・資産・生活状況について
必要な範囲で調査できる
● 生活保護法 第29条(報告義務)
- 受給者は
収入・資産について正確に申告する義務がある
👉
ただし条文には一貫して
「必要な範囲」「必要最小限」 という制限が付いています。
② 銀行口座についての「合法ライン」
✅ 調べられること(合法)
以下は 条件付きで合法 です。
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保護費受給口座の
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残高
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入出金履歴
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申告済み口座の確認
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特定の入金(不明金・継続収入)の確認
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過去数か月分(通常1〜6か月程度)
※ 原則:
目的が明確で、範囲が限定されていること
❌ 調べられないこと(違法・グレー)
次は 原則アウト です。
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理由なしで全銀行を一斉照会
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無期限・何年分もの通帳提出
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収入確認と無関係な私的支出の詮索
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同意なしでの銀行照会(例外除く)
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「念のため」「一応全部」という調査
👉
「調査のための調査」は違法。
③ 「本人同意」がある場合/ない場合の違い
● 同意がある場合
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金融機関への照会が可能
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ただし 範囲は同意書の内容まで
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目的外利用は禁止
● 同意がない場合(重要)
同意がなくても、次の場合は調査される可能性があります。
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明確な不正受給の疑い
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申告内容と生活実態の重大な矛盾
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具体的な通報・証拠がある場合
ただしこの場合でも:
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内部決裁
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調査理由の文書化
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最小範囲限定
が必須。
👉
職員の独断ではできない。
④ 期間の「合法ライン」
実務上の目安(全国共通の運用感):
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通常確認:1〜3か月
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不明入金等がある場合:3〜6か月
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それ以上:明確な理由が必要
1年以上の提出要求は
👉 理由説明がなければ違法寄り。
⑤ 口座の範囲の「合法ライン」
原則
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保護費受給口座
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申告済みの保有口座
原則NG
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「あるか分からない全口座」
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家族・知人名義口座の探索
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電子マネー全履歴の網羅要求
⑥ 実務で重要な判断基準(これが核心)
合法かどうかは、
この3点で判断されます。
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必要性
→ 何を確認するためか -
相当性
→ その範囲で足りるか -
最小性
→ それ以上は不要か
このどれかが欠けると
👉 違法・不当調査になり得る。
⑦ 受給者側が使える「合法ライン確認フレーズ」
実務で有効な言い方です。
「今回の調査は、
どの収入・どの期間を確認するためでしょうか?」
「生活保護法では必要最小限と聞いていますが、
今回はどこまでが必要範囲ですか?」
👉
対立せず、法に基づいて確認するのがコツ。
まとめ(結論)
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調べられるのは 必要最小限まで
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目的・期間・口座が特定されている必要あり
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無制限・網羅的調査は不可
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同意があっても万能ではない
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不正が疑われる場合でも制限は残る
👉
生活保護の調査権は「強いが、無制限ではない」。