IoT推進支援ビジネス
IoT推進支援ビジネス(IoT導入コンサル・開発支援・運用サポートなど)にありがちな問題点を、論点別に体系的にまとめたものです。
1. ビジネスモデル面の問題点
① プロジェクト単発化・収益が安定しにくい
IoT導入支援は「PoC止まり」になりがちで、
本番運用まで行かないため継続収益につながらないケースが多い。
② 顧客の投資判断が遅い・曖昧
IoTはROIが計算しにくい領域であるため、
「本当に効果が出るかわからない」 → 導入が遅れる → 営業工数が肥大
2. 技術面の問題点
③ 端末・ネットワーク・クラウドなど多層で複雑
IoTは以下をすべて理解しないといけないため、技術要求が高い:
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デバイス(センサー・ゲートウェイ)
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通信(LTE-M、LoRaWAN、BLE、Wi-Fiなど)
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クラウド(AWS IoT、Azure IoT Hub など)
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セキュリティ(暗号化・鍵管理・ゼロトラスト)
結果として、
「何でも少しずつわかる人材」が不足しがち。
④ セキュリティリスクが高い
IoT機器の脆弱性、証明書管理、ファームウェア更新など
運用中のセキュリティ確保が非常に難しい。
3. 顧客側の課題による問題
⑤ 業務可視化が不十分で要件が曖昧
顧客側が「何が課題で、何を改善したいか」を
明確にできていないケースが多い。
→ 仕様がぶれる
→ 工期遅延 & コスト増
→ 両者の不満につながる
⑥ 現場の運用負荷を見落としがち
機器の電池交換、ネットワーク維持、メンテナンスなど
導入後の手間を理解していない顧客が多い。
→ 結果として導入後に「面倒だから使われない」状態になる。
4. スケール面の問題点
⑦ PoC(実証実験)からのスケールが難しい
PoCは動くが、本格展開になると以下が障壁になる:
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台数増加によるコスト増
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現場での施工・設置工数
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通信エリアの問題
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データ量増加によるクラウドコスト
⑧ 現場に応じたカスタマイズが必須で、テンプレ化しづらい
製造業/物流/農業/建築など用途が多様であり、
汎用ソリューションが作りづらい。
5. 体制・ビジネス運営面の問題点
⑨ プロジェクト管理が難易度高い
IoTは複数ベンダーが関与するため、
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ハード
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通信事業者
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ソフト開発会社
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クラウド事業者
調整コストが高く、責任範囲が曖昧になりやすい。
⑩ 運用フェーズのサポート負担が大きい
サポート内容が以下のように多岐にわたる:
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デバイス故障対応
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通信障害対応
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ファームウェア更新
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クラウド監視
特に24/7での運用保守がボトルネックになりがち。
6. 市場環境の問題点
⑪ IoTの価値が「データ取り」止まりで終わる
「データが取れるだけ」で解決しないため、
分析/予測/制御 のレイヤーまで踏み込まないと価値が出にくい。
⑫ 価格競争になりやすい
ハードウェアはコモディティ化しやすく、
差別化が難しいため価格競争に陥る傾向。
7. 法規制・セキュリティ面の課題
⑬ 個人情報・情報セキュリティ対応が必須
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カメラ画像
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位置情報
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生産データ
などの扱いは慎重さが必要で、
対応コストが増大しやすい。
まとめ
IoT推進支援ビジネスの問題点は以下の3つに集約されます:
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収益化・スケールが難しい(PoC止まり問題)
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技術と運用が複雑で、必要人材が不足
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顧客側の要件不明確・運用負荷の理解不足
IoTで収益を上げるには、単に製品を売る「モノ売り」から、サービスを通じて継続的に利益を得る「コト売り」へと発想を転換することが重要です。
ここでは、その代表的なビジネスモデルを4つのパターンに分けて、具体例とともに分かりやすくご紹介します。
1. 継続課金モデル(サブスクリプション)
製品やサービスを「月額制」や「使った分だけ」といった形で提供し、継続的かつ安定した収益を目指すモデルです。
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定額制(サブスクリプション) IoT機器や関連サービスを、月額・年額などの固定料金で提供します。 (例) 浄水器のフィルター交換時期を自動で通知・配送する月額サービスなど。
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従量課金制 機器の稼働時間やデータの使用量など、利用した分に応じて料金を請求します。 (例) ロールスロイス社が提供する航空機エンジンの稼働時間に応じた課金サービスは、このモデルの代表例です。
2. 製品のサービス化(付加価値)モデル
既存の製品にIoT機能を加え、遠隔監視や自動メンテナンスといった便利なサービスを提供することで、新たな収益源を生み出すモデルです。
(例)
- 産業機械にセンサーを取り付け、故障の予兆を検知して知らせる「予防保全サービス」。
- フィリップス社が法人向けに行う、照明設備の利用状況に応じて料金を支払う「照明のサービス化」。
3. データ活用モデル
IoTで収集した価値あるデータを、分析・加工して他社に販売するビジネスモデルです。
(例)
- 自動車から集めた走行ルートや急ブレーキの頻度といったデータを、保険会社やマーケティング会社に販売する。
4. シェアリングエコノミーモデル
高価な機械や設備を、複数のユーザーで共有(シェア)して利用してもらうモデルです。IoT技術で利用状況や予約管理を効率化します。
(例)
- 建設機械や農業機械など、高価で利用頻度が限られる機器を、利用時間に応じて課金するシェアリングサービス。
これらのモデルは、物理的な製品販売に留まらず、IoTによる「サービスの提供」や「データの活用」を軸にすることで、様々な業界で新たな収益の柱となっています。