記憶の定着
書くという行為は、記憶の定着に非常に有効であるとする研究結果や考え方が多くあります。
具体的な効果としては、主に以下の点が挙げられます。
- 複数の感覚(視覚・触覚・運動感覚)の活用:
- 手書きで文字を書くことは、目で見、手で触れ、動かすという複数の感覚を同時に使うため、脳の広い範囲(視覚野、運動野、体性感覚皮質など)が活性化され、記憶の定着が強化されると考えられています。
- キーボード入力と比べ、脳の広範囲が刺激され、記憶に重要な役割を果たす海馬の活動が高まるという研究もあります。
- 情報の「深い処理」の促進:
- 手書きはタイピングよりもスピードが遅くなるため、情報を一字一句書き写すのではなく、要点をまとめたり、自分の言葉に言い換えたりする作業(エンコーディング)が発生しやすくなります。
- この能動的で深い情報の処理が、単に情報を流し読みするよりも、長期的な記憶として残りやすくなる要因とされています。
- 注意力の向上とケアレスミスの減少:
- 文字の形やスペルを正確に書くことに意識が向くため、注意力が高まり、知識の正確な習得につながるとされています。
ただし、記憶の定着という点では、書くことと組み合わせて**「思い出す練習(テスト効果・想起練習)」をすることが最も強力**であるという研究結果も示されています。
- 理想的な流れ:
- 【覚える段階】:ノートに書くことで内容を理解し整理する。
- 【定着させる段階】:書いた内容を見ずにクイズ形式で思い出す(テストする)。間違えたらすぐに正答を確認する。
このように、「書く」ことは単に情報を記録するだけでなく、脳の処理を深くし、長期記憶に移行させるための有効な手段として認識されています。